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家計調査で家庭崩壊

それは国勢調査が終わって間もなくのことだった。




「ごめんください。県から調査のお願いです。」

「国勢調査なら郵送しましたよ!」

「いえ、国勢調査でなく総務省統計局の調査にこの地区が選ばれました。」



土曜日の朝10時ころ調査員はやってきた。

既におきている家庭が殆どだろうが、隆の仕事はハード、毎日5時に起き6時には既に最寄りの駅へ、帰りは終電で帰ってくるという毎日。

そして、妻の光代は仕事はしていないが、勤勉な旦那様の付き合いで毎日起きて待っており、また朝は必ず一緒に起きる毎日であった。

光代は仕事をしていないので昼間寝ておけばよいものの、最近購入したばかりの地デジテレビで録画機能が付いており、旦那が出社した後は地デジの番組表を表示、その日の韓国ドラマを予約、子供の朝飯の世話をし送りだし、洗濯掃除が終わるとコーヒーブレーク、そこから昨日録った韓国ドラマの鑑賞会が始まる。

夕方には子供が帰って来て、夕食を作り、日本ドラマタイムが始まる。

寝る時間は無いのである。



と言う事で我が家はまだ寝ていた。


調査員が話す。

「全国9,000世帯を抽出し、この自治体では156世帯が対象です。」

隆は即座に思う。

「宝くじならよかったのに!」

そして隆は寝起きと言う事もあり、無性にムカついた。

「国勢調査が終わったばかりでまた調査ですか?」

「いえいえ国勢調査は地方自治体でやっています。この調査は家庭調査と言って、総務省が都道府県を通じ行っているので全く別物です。」

「無駄ですね。そんなことやっているからこの国がおかしくなる。」

「あなたの給与も払わなくてはいけないし、税金の無駄使いですね。」

本当に寝起きでムカついていたので、調査員は非常勤の職員さんとの事で、それ自体もかなり無駄に感じ隆は悪態をつきまくった。



調査員は初老のおばあさん。恐縮した様子ではあったが、簡単なアンケートへ答えて欲しい旨あった。

隆は事前にそのような統計調査もあることを知らなかった。

いかにも胡散臭い。

任意なのか強制なのか?を問いただすと強制だとの事。

アンケート内容は家族構成と自分が仕事をしているか?妻が仕事をしているかくらいとの事で、はやくそれを終えたくもあり回答した。


光代はかなりむっとした感じで布団から上半身を起こし、何事があったのか問いただす。

先ほどの応対で既にムッとしている隆にまた火が付きそれからその日は家族がバラバラになり、せっかくの休日、遅い朝食兼昼食は別々、夕食は冷蔵庫の残飯を全て鍋に入れただけの料理であった。




隆の家庭は平和であった。あの日、そしてこれからの日々を除いては。

そしてこれから訪れる最悪の日々。正確に言うと今日の目覚める前までは。




あの日から2週間ほどたった金曜日の夜、「総務省統計局」と印刷された封筒が自宅に届いたと光代から携帯に連絡があった。しかも住所は手書きらしい。いかにも何か変だとの妻の緊急電話。

このデジタル時代、国の機関から手書きの書類が来るのはおかしいとの妻の意見。

仕事中に電話・携帯も含めかけてくることは今の妻には殆ど無いと言うか皆無であった。地デジを買ってからは初めてである。


「なんか封筒届いているよ!やばいんじゃない。投資で凍死してるんじゃない?」

「どこからだよ?」

「総務省統計局だって!」

「株とか関係ないだろう?総務省だったら。」

「うすうす気づいてたけど株やってるんだ?」


隆はマズったと思った。確かに自社株を持ち株会で買っていることは妻には教えてあったが、そのほかにもリーマンショック前までにかなり所有していた。しかもFX、外国為替証拠金取引は今でもやっている。

そして株では500万、FXでは250万円ほど溶かした。

たぶんリーマンショック前に精算していたら現金で家が買えたほど儲かっていたが、投資を始めた頃の資産状況からほぼ増えていないほど損をしていた。

隆の家計では月5万円ゆうちょ銀行に定額貯金をすることにしている。光代もそうしていると思っている。


投資開始が2005年の年末だから、現在2010年の年末。5年毎月5万円。しかも子供の高校の授業料が無償化となったので、ある時期からは7万にしようね!ってなっていた。

増額は除いても5万円×12カ月×5年=300万円。

それがすっぽり無くなっている。またそれ以上に無くなっているはずだ。怖くて隆は確認していない。



そんな事がバレないように日々、通帳を記帳しなかったり、ネット取引申請をしパソコン操作のみで証券口座へ資金を移動したり、またもっと酷いのは、こずかいが足りなく、出張の電車代・宿泊代をネットで予約、引き落としは家庭口座からと水増しで家庭の金を使い込んでいた。



家に帰ってみると確かに怪しい「総務省統計局」からの封書が届いている。

開けてみた。

やばい。

これはやばい。



本物のようだった。と言うより正式な国からの調査依頼であった。

日々の家計簿をつけ、給与などの所得を付け、貯蓄やら投資・保険も全ての家計のお金の流れを6ヶ月間も報告しなくてはいけないらしい。

即、隆は思った。

「週明け断ろう。どうせ任意だろう。」



週明けの月曜日会社へ出社、先輩や上司、部下にも聞いた。こんな調査が来たけどホントかね?ってな事を。

皆知らなかった。国勢調査なら出したよと言う人はいたが、国勢調査すら出さずに捨てたと言う人もいた。

まず真贋を県へ問い合わせした。

「こんなものが届いたのですがどこで周知してますか?もしくはやってないですかね?」

ちょとした何かの間違いではないかと言う期待も込めてみたが、やはりそのような調査はしており県のホームページから総務省統計局のホームページへリンクしてあるので良く見てくれとの事。




その対応にムッとした。

「任意ですか?強制ですか?」

切ったように言葉が出たが、電話の窓口ではさも予定された質問であったのか

「統計法できまってまして、故意に調査対象から外れようとしますと50万円以下の罰金刑です。」

との返答。

その後は税金の無駄使いだとか、2度手間だとか、何に役立つんだとかありとあらゆる悪態をついたが慣れたもので、マニュアルがあるのか?丁寧に切り返された。



続いて総務省統計局へ電話した。

「家庭調査対象者が故意に断ると罰金刑になるんですか????」

「そうです。統計法で決まってます。」

「統計法って知らないんですが?」

「統計法ではこれこれしかじか・・・・・・・・・ まあ国民の義務の様なものです。」



小学生だか中学生の時国民の義務は習った。

国民の義務は確か「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」の3つだったはずだ。

教育はちゃんと義務教育は受けた。昼寝はしたが。

勤労はしている。ちゃんと。

納税はサラリーマンだから一杯取られている。

家庭調査を出す義務が抽出され来るなんて不公平だ!!!

って言ってやれば良かった。

もしかしたら免除されていたかもしれない。




そしてその時は来た。

一番最初に土曜日の朝に来た初老のおばあさん。平日の昼間に来たとの事。私は平日仕事で家には居ない。

「旦那さんに怒られましてね。国勢調査終わったばかりにすいませんね。本当に!」

「どうせ私がやりますから、夫は何もしませんからいいですよ!」

妻の光代はひとつ返事で受けたそうだ。

旦那が必死に無かったことにする努力をしているのに。





そしてそれから数日後調査が開始された。

日々の消費したものを品物ごとに光代は記入した。

口座引き落としの内容を確認するために通帳を探した。

あったがかなりな期間未記入であった。

光代は記帳した。

かなりの期間記帳が無かったため、合算で出力された。

残高がかなり少ない。不思議に思った。

そして郵便局へも行った。

確か5年前500万円はあった。

記帳した。

100万も無い。

自宅へ帰った。

定期貯金の証書を確認した。

なぜか枚数が少ない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?









隆が帰宅。

そして崩壊した。








あとがき:
統計法で国に報告する義務(刑罰もある)と個人情報保護法との対比はかなり難しいと考える。このような家庭が本当にあるかどうかは知らないがこれこそ本当のホラー!血は出ないが怖すぎだ。そしてそんな調査がどこで役立っているのか?果たして9000世帯抽出で精度はどうなのか?本当に皆協力しているのか?これこそ税金の無駄使いではないのか?マクロミルだったか民間ネット調査会社へ外注すれば喜んで数100円でやってくれる人はいっぱい居るのではないか?なんで隆家へ来たんだ?ふざけるな!




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